【レビュー】液晶+Wi-Fi+防水“全部入り”スポーツカメラ「GC-XA1」

JVCウェアラブルカメラを本気のバイクレースで検証


JVC ADIXXION GC-XA1

 日本国内でも次第に注目度が高まりつつあるウェアラブル型のスポーツカメラ市場に、いよいよ国内メーカー発の本格的な製品がお目見えした。JVCが7月下旬に発売した「ADIXXION(アディクション) GC-XA1」は、カメラ本体に徹底的な防水・防塵仕様が施され、標準でディスプレイとWi-Fi機能も搭載。利便性と多機能さを兼ね備えた製品に仕上がっている。

 2種類のマウントアダプターが付属する標準パッケージは、実売価格で2万円台後半と、他メーカーの製品と同程度の価格帯。今回はこのパッケージと、別売マウントアダプター2種をお借りできたので、視界確認用の自転車走行動画に加え、ジムカーナのレース本番でも使用させていただいた。スポーツカメラ市場で圧倒的なシェアを誇る「GoPro」にどこまで対抗できるのか、国内メーカーの実力を測ってみたい。


パッケージ同梱品

■ 国産の“全部入り?”ウェアラブルカメラ

 本体サイズは、液晶ディスプレイ付きとしてはかなり小型・軽量な、外形寸法74×35×53mm(幅×奥行き×高さ)、重量約104g。本体のみの大きさであれば「GoPro HD HERO2」の方がやや小さいが、ハウジングに格納して使わなければいけないことや、別売のLCDパックを装着しないと映像プレビューを行なえないことを考えれば、「ADIXXION GC-XA1」の方が圧倒的にコンパクトだ。

 単純な立方体ではなく、角を切り取ったような多面体になっているところも、デザイン性や持ちやすさの点で優れていると感じる。

前面にレンズ1.5型液晶を搭載側面に三脚穴

 別途カバー類を装着することなく、IPX8/IP6X等級の防水・防塵に対応しているのに加え、2mの高さからの落下に耐える耐衝撃性能と、摂氏-10度までの耐低温性能を備えるのも大きなポイントだ。1.5型の液晶ディスプレイで映像のプレビューや本体設定が可能であることと、スマートフォンなどとの無線LAN(Wi-Fi)接続が可能なことも考え合わせれば、いわばケータイの“全部入り”のような、国産らしい作り込みがなされている製品と言えるだろう。

 本体の底面と側面の2箇所に一般的なカメラ用三脚穴が設けられており、付属の「ゴーグルマウント」や「フレキシブルマウント」、別売りのマウントもこの三脚穴にねじ込む形で固定する。カメラ本体の角度に応じて映像の角度を変えることはできないが(映像の上下180度反転は可能)、取り付け位置やスペースの都合に合わせて縦方向・横方向のいずれの側からでも容易に固定できるのはうれしいところだ。

別売の「ロールバーマウント」別売の「ハンドルバーマウント」

 電源のオン・オフ、録画の開始・終了(静止画の撮影)、液晶ディスプレイ上での各種操作は、本体上面にあるボタンで行ない、充電用のミニUSBポートと映像・音声出力用のHDMIミニ、メモリカード、バッテリーパックへは本体後部のカバーを開けてアクセスする。メモリカードはSD/SDHCに加えてSDXCもサポートし、現在のところ64GBまでの容量に対応。64GB利用時は、約9時間30分相当の1080p動画を撮影できるとしている。

 液晶ディスプレイ上では、カメラ映像のプレビュー、本体の各種設定、録画・撮影した映像の再生・削除などが行なえる。1.5型という小さな画面のため、映像のディテールまでチェックすることはできない。あくまでも画角や撮影できているかどうかの確認用となる。

電源、録画、操作ボタンは本体上面に設置後部のカバーを開くとバッテリー、SDカード、ミニUSB、HDMIミニにアクセスできる

 カメラ本体の仕様としては、F2.8のレンズを備えた504万画素のCMOSセンサーで、露出はオート。ホワイトバランスもオートを利用できるほか、周囲の明かりの色温度に応じた5種類のプリセットを手動選択できる。ウェアラブルカメラとしては珍しく5倍までのデジタルズームを備え、ズーム状態での静止画・動画撮影も行なえる。

 動画撮影時にはデジタル式の手ブレ補正機能「D.I.S」も利用可能。最大視野角は152度で、撮影可能な動画は1080p 30fps(15Mbps前後/1,920×1,080ドット)、720p 60fps(13Mbps前後/1,280×720ドット)、720p 30fps(7Mbps前後/1,280×720ドット)、960p 30fps(9Mbps前後/1,280×960ドット)、480p 30fps(4Mbps前後/848×480ドット)の5種類となっている。

 動画コーデックはMPEG-4 AVC/H.264で、音声はAAC/44.1kHz/36kbps CBR/モノラル。ファイルフォーマット.mp4。音量調整はオートで、外部マイク端子は備えないため、内蔵マイクでの録音のみとなる。

 連続撮影時間は、1080p、Wi-Fi機能オフ時で約1時間10分。撮影時も常にディスプレイに映像が表示されているせいか、バッテリ持続時間は他機種と比べても短めだ。長時間の撮影を繰り返すときは予備バッテリを持ち歩きたい。静止画像は2,592×1,944ドットサイズのJPEGで、手動撮影のほかセルフタイマーを用いた撮影もOK。さらに、1秒または5秒間隔で自動で静止画撮影し、1本の動画として保存できるタイムラプス撮影機能も用意されている。


■ 映像プレビューだけでなく、カメラの操作までできるWi-Fi接続

 他社製品では軒並みオプション扱いとなっているWi-Fi接続に、「ADIXXION GC-XA1」が標準で対応しているのは大きな特徴だ。

 専用アプリケーションをインストールしたPCと、Wi-FiまたはUSBで接続して設定などを行なえるほか、専用アプリ「WiVideo」をインストールしたiPhoneやAndroidスマートフォンともWi-Fi接続できる。Wi-Fi経由でのカメラ映像のプレビュー、動画解像度の設定切り替えが行なえるほか、録画の開始と終了(静止画の撮影)、デジタルズームの調整もアプリ上で実行可能だ。

「WiVideo」でのプレビュー画面。録画、静止画撮影、ズームが可能撮影済みデータの再生もできるようになっている動画解像度の変更など、各種設定変更もOK

 この「録画の開始と終了」をスマートフォン上で行なえる機能は、使い方によって面白いことができそうだ。たとえば迫力のあるシーンを動画に残したいとき、緊張のあまりカメラを身につけた撮影者がうっかり録画開始・終了をし忘れる、ということも大いにある。そんなとき、撮影者とは別の人間が離れたところからリモート操作すればミスはなくなるだろう。

 実際に試してみたところでは、iPhone 4でWi-Fi Directにて接続した場合、見通しのよい場所ではおよそ30~40mほどの距離までリモートコントロール可能だった。録画開始後、電波の届かない範囲に離れてしまっても録画自体は継続しているため、再び電波の届く範囲になった時点で録画を終了できる。

 ただし、録画開始後3分でWi-Fi接続が自動切断される仕様になっていることから、リモートコントロールは3分未満の撮影時間に限定されてしまう。あるいは、録画開始時のみリモートコントロールする、という使い方になるだろう。

 Wi-Fi接続には2種類の方法があり、iPhoneではWi-Fi Directを利用できるほか、iPhone/AndroidともにWi-Fiアクセスポイントを経由した接続が行なえるのもうれしいところ。無線LANを構築している自宅はもちろんのこと、屋外でもホットスポットやモバイルルータなどを介してカメラとスマートフォンを接続できる。なお、パスワードが設定されているアクセスポイントに接続するには、あらかじめPCを使ってカメラ本体の設定をしておく必要がある点に注意しておこう。

Wi-Fi接続するときは、本体のMENUボタンを押して無線LAN設定を呼び出すWi-Fi Directで接続したいときは「Direct Mode」を選択し、iPhone側では所定のSSIDに接続。アクセスポイント経由で接続するときは任意のアクセスポイントを選ぶ

■ バイク、自転車に搭載しての撮影テストを実施

 今回検証した撮影シーンは、バイクヘルメットに“フレキシブルマウント”を使って粘着ステッカーで固定したパターンと、バイクのフロントフェンダーに同様の方法で固定したパターン、そして自転車のハンドルバーに別売の“ハンドルバーマウント”を用いて固定したパターンの3通りとした。

バイクには“フレキシブルマウント”で固定。ヘルメットに固定した場合は、遠目からでもちょっと目立つフロントフェンダーに固定すると、車体の色に紛れることもあって、あまり目に付かない
自転車には“ハンドルバーマウント”で固定。マウントベースと雲底部分は脱着できるようになっているので、ベースは付けっぱなしにしてもよさそうだ

 バイクでは、ダンロップタイヤ(住友ゴム工業)様にご協力いただき、7月29日に埼玉で開催されたオートバイジムカーナ大会における午前・午後1回ずつの走行をモードを変えて撮影。1回目は720p 60fps、2回目は1080p 30fpsとしている。自転車では、他機種のレビュー時にも利用した公園の一定のコースを各モードで撮影している。いずれもD.I.S機能はオンの状態とした。

【動画サンプル】
【JVC GC-XA1 バイク 720/60p】
走行1回目:ヘルメットに固定。720p 60fps
【JVC GC-XA1 バイク 1080/30p】
走行2回目。フロントフェンダーに固定。1080p 30fps
【JVC GC-XA1 自転車 1080/30p】
【JVC GC-XA1 自転車 720/60p】
【JVC GC-XA1 自転車 720/30p】
【JVC GC-XA1 自転車 960/30p】
【JVC GC-XA1 自転車 480/30p】

 

動画サンプル
バイク 720/60p
(171MB)
バイク 1080/30p
(193MB)
動画サンプル
自転車
1080/30p

(65.2MB)
自転車
720/60p

(56.8MB)
自転車
720/30p

(31.8MB)
自転車
960/30p

(39.8MB)
自転車
480/30p

(17.1MB)

 映像の印象としては、彩度が濃く、解像感に乏しい感じ。特に自転車の車載映像にある樹木の葉の部分などが明らかにべたっとした見え方になっているのがわかる。また自転車のシーンでは、逆光によるスミアも発生してしまった。GoProなどの競合に対して、飛び抜けて勝る部分は無いといえる。

 音声についても、36kbpsモノラルということもあるのか、クリアとは言い難く、風切り音が大きい。自転車では細かい振動が、こもったようなノイズとなって聞こえているのも目立つ。

 

【静止画サンプル】

ズームなし2倍ズーム時5倍ズーム時

 静止画像は、ズームなしと、2倍ズーム、5倍ズームの3段階で撮影した。多少黄色っぽいくすみはあるものの、「GoPRO HD HERO2」より自然な発色に感じられる。デジタルズームということで、ズーム時はディティールがぼやけてしまうが、動画編集する手間をかけずに、簡易的な寄りの映像がほしいときなどには重宝しそうだ。


■ “スポーツ時”の使い勝手にやや欠けるか

 前述の通り、電源のオン・オフと、録画の開始・終了(静止画撮影)は本体上部に設けられたボタンで行なうが、いずれのボタンも小さいのが気になった。録画ボタンには表面に細かな凹凸があり、録画開始・終了時には操作音も鳴らせるとはいえ、スポーツカメラとして考えた場合、素手で、騒がしくない場所、というシチュエーションはそれほど多くないのではないだろうか?

 事実、今回バイクの車載映像を撮影する際も、前日のテスト時から本番のスタート直前まで何度も録画開始・終了のシミュレーションを重ねなければならなかった。厚手のレーシンググローブごしでは電源ボタンと録画ボタンの区別がしにくく、ボタンを押したと思っても実際には録画が始まっていなかったり、録画が終了していない場合も多かった。今回のバイクの例では、周囲は常に他のバイクが走行しており、操作音を最大ボリュームにしてもヘルメットや騒音のせいで聞こえにくい。こういった環境下では、以前レビューした「ION AIR PRO」のようにバイブレーションで録画開始/終了がわかる機能などがありがたい。

 JVCのカタログでも、モトクロスやスノーボードなどグローブ着用スポーツの提案が目立つだけに、素手での操作性はもちろんのこと、グローブごしでの操作性にも配慮してほしいと感じた。

 また、テストを行なった2日間とも猛暑日だったためか、カメラ本体がかなり熱くなりがちで、Wi-Fi機能を利用しながらの撮影は、より熱をもちやすいように感じられた。本製品に限ったことではないが、本体の温度が上昇し過ぎるとバッテリー残量が極端に少なく認識されるなど、炎天下での使用は注意が必要だ。

 一方、GC-XA1ならではの魅力は、誰もが「小さい!」という感想を口にしたほどのサイズ感。さりげなく装着して、日常やスポーツなどのアクティビティをさりげなく映像で残す、というクールな使い方ができそうだ。


■ サイズ、機能、価格に魅力。用途にあわせて選択したい

 上記のようにスポーツ利用時の操作性には、競合製品の方が使いやすいと感じた部分もあるが、小さなボディにWi-Fiや液晶など、さまざまな機能がぎゅっと詰まっているところは国産らしいこだわりを感じる部分。例えば「GoProHD Hero2」(31,498円)は液晶パック(9,975円)やWi-Fi Pac(価格未定)はオプション扱いとなるし、機能豊富な「Contour+」は実売49,800円とやや高価だ。価格の近い「ION AIR PRO Wi-Fi」(実売29,800円)に対しても液晶の標準搭載という点や、サイズ、安定性などGC-XA1が上と感じる。

型番JVC GC-XA1GoPro
HDD Hero2
Contour+ION AIR
PRO Wi-FI
画角152度170度170度170度
電子手ぶれ補正---
防水性能
(ハウジング)
Wi-Fi別売
(価格未定)
実売価格約3万円31,498円約5万円約3万円

 ある意味、この手のウエアラブルカメラは「用途次第」で、マウントのしやすさや、何に装着して、何を撮るかによって最適な選択肢は異なってくる。今後、マウント類の充実が進めば、水・塵・衝撃に強いというタフネス性能をさらに幅広いシーンで活かすことができる。価格や機能を考えれば、GoProの強力なライバルにもなりそうだ。


Amazonで購入
JVC ADIXXION
GC-XA1


(2012年 8月 9日)

[ Reported by 日沼諭史 ]