レビュー

宅外から録画番組を再生できる新RECBOX「HVL-A」を試す

DTCP+リモートアクセスの革新と制限

RECBOX HVL-Aシリーズ

 アイ・オー・データ機器が同社の録画用NASブランド「RECBOX」の新モデルとして発表した「HVL-A」シリーズは、業界初となる「DTCP+」に対応したNASだ。2月下旬より発売し、HDD容量2TBの「HVL-A2.0」と3TBの「HVL-A3.0」、4TBの「HVL-A4.0」をラインナップ。価格は2TBが27,720円、3TBが36,645円、4TBが52,290円。

 特徴はなんといってもDTCP+に対応したことだ。これまでは宅内に限られていたデジタル放送のネットワーク再生が、外出先など宅外からでもインターネットを介して視聴できるようになる。RECBOX/HVL-Aシリーズは、このDTCP+に初めて対応したNAS(LAN HDD)となる。

 このほか前モデルの「HVL-AVシリーズ」と比較すると、SCEのネットワークレコーダ「nasne」からのムーブ・ダビングや、スマートフォン・タブレットからの操作に対応するなど、細かな点で機能拡充が図られている。こうしたNASとしての機能強化も魅力的だが、やはりこれまで制限されていた、デジタル放送録画番組の外出先からのリモート視聴を可能とした点が画期的な製品。DTCP+によるリモートアクセスを中心に「HVL-Aシリーズ」をテストした。

サイズは大幅に小型化。動作音も静かに

 RECBOXのブランド名は従来モデルのHVL-AVシリーズから継承しているものの、サイズは大幅にコンパクト化され、外形寸法は215×183×40mm(幅×奥行き×高さ)。幅は前シリーズから約45mm、奥行きは約57mm小さくなり、厚みも約5mm低くなった。デザインも角張った直方体の前モデルに対し、HVL-Aシリーズは角がラウンドシェイプ形状となり、前シリーズでは鏡面加工されていた前面部もマットな質感に変わるなど大幅な変更を遂げている。

 デジタルカメラのコピー機能も新たに搭載。前面に追加されたUSBポートを利用してボタン1つでデジタルカメラのデータをHVL-Aシリーズにコピーできる。また、前モデルでは2ストリームだった接続数も3ストリームへと拡張され、最大3台の録画・再生機器で同時に利用できるようになった。

 シンプルなインターフェイスは前モデルから引き継がれており、背面は電源コネクタ、LANポート、USB HDD増設用のUSBポートを搭載。FAT32/NTFSで2TB以下のUSB HDDを接続することで、HDD内の動画や音楽、写真データをDLNA経由でネットワークに公開できる。前面には電源ボタンとデジタルカメラコピー用のUSBポート、USB HDD着脱とデジタルカメラコピーの機能を兼ねるFUNCスイッチが設けられている。

前面
天板
底面
側面
背面。USB端子などを装備
電源はACアダプタ

 動作音は前モデルのHVL-AVシリーズと比べると静音化が図られている。HVL-AVシリーズでは本体から数十cm程度離れた距離でも動作音がはっきり聞こえたのに対し、HVL-Aシリーズは本体に耳を近づけると動作音がわかる程度。一定時間利用しないと自動でスタンバイ状態になる機能も搭載されており、この状態であればほぼ無音での運用も可能だ。

前モデルとのサイズ比較。下がHVL-AVシリーズ、上がHVL-Aシリーズ
背面
大幅な小型化に加えて角がラウンドシェイプになった

 なお前モデル「HVL-AV」は、HVL-Aの下位シリーズと位置付けを変更。HVL-AVDTとしてリニューアルし、併売する予定とのこと。

DTCP-IP 1.4で規定されたDTCP+の実装でリモートアクセスを実現

 HVL-Aシリーズが業界で初めて対応したDTCP+は、DTCP-IPをライセンスする団体「DTLA」が2012年1月に策定した「DTCP-IP 1.4」の中で新たに追加された仕様。アナログ映像の出力禁止対応(Digital Only Token)、DRMコンテンツのMPEG-TS以外のコンテナ伝送の対応への対応、新しいコピーカウント概念(マルチコピーカウント)への対応といった機能に加え、宅外からの接続を可能にするリモートアクセスの仕様とルールの定義が追加された。

 これまでDTCP-IPで接続できる機器は、家庭内など同一ネットワークに存在する機器間のみに限られていた。DTCP+であれば、インターネットを介してDTCP-IPで接続し、外出先など宅外から自宅の録画番組を視聴することが可能になる。

 ただし、DTCP+によるリモートアクセスはいくつかの制限が設けられている。外出先からDTCP+で接続するクライアントはあらかじめサーバー側へ登録するペアリングが必要なほか、視聴できるコンテンツは録画済み番組など一度保存したファイルに限られ、地上デジタル放送などのライブストリーミング視聴(いわゆる放送転送)はできない。また、同時に接続できる台数は1台のみ、機器にペアリングできる登録台数は最大20台という制限も設けられている。

 また、ARIBの技術要件を満たすことが困難なため、現時点ではレコーダ(チューナ搭載製品)におけるDTCP+サーバー対応は難しいようだ。そのため、今後しばらくは、DTCP+サーバー製品の中心は、RECBOXのような(チューナの無い)NASになると予想される。基本的にはレコーダなどで番組を録画し、その番組をNASなどにダビングする必要があるということだ。

 なお、DTCP+規格自体は2012年1月に策定されており、暗号方式はAES 128bitに定義され、運用ルールもDTLAが定めているものの、リモート接続の接続方式は現段階で標準仕様が定まっていない状態だ。そのため、今後DTCP+対応機器がリリースされた場合、異なるメーカー同士の機器では接続方式が異なるためにつながらない、という可能性がないわけではない。

 アイ・オー・データでは、DTCP-IPソフト「DiXiM」を手がけるデジオンとの協業により、デジオンのDTCP+接続サービス「DiXiMリモートアクセスサービス」を採用することでDTCP+にいち早く対応。また、アイ・オーやデジオンのほか競合メーカーであるバッファロー、そしてKDDIなども参加するデジタルライフ推進協会(DLPA)では、DTCP+に準拠したリモートアクセスガイドラインを定めるなど、業界内での標準化作業が進められているようだ。

対応クライアントは現状Windowsのみ。スマートフォンは対応検討中

DTCP+対応クライアント「DiXiM Digital TV 2013 for I-O DATA」

 基本的にはNASなので家庭内のネットワーク環境が必須なほか、DTCP+でアクセスするためインターネット接続環境も必要。

 DTCP+でのリモートアクセスは、接続するクライアント側もDTCP+に対応している必要があり、現状はHVL-Aシリーズに同梱される「DiXiM Digital TV 2013 for I-O DATA」をインストールしたPCでのみリモートアクセスが可能。「DiXiM Digital TV 2013 for I-O DATA」の対応OSはWindows Vista/7/8で、Mac OSには非対応。アイ・オーでは今後スマートフォン対応などを進めていく予定としているが、時期は未定となっている。

 HVL-Aシリーズの設定は、端末に割り当てられたIPアドレスをブラウザで入力することで管理画面にアクセスできるが、IPアドレスを自分で調べることなく自動で検出してくれるソフト「Magical Finder」を利用すればボタン操作のみで設定画面へアクセス可能。Magical Finderの対応OSはWindows XP/2000/Vista/7/8のほか、Mac OSにも対応しており、検出した機器の「ブラウザ」を選択することで端末に割り当てられたIPアドレスでブラウザにアクセスし、本体の設定が可能になる。

ネットワーク上の対応機器を検索できる「Magical Finder」
HVL-Aシリーズの本体設定画面

 リモートアクセスを利用する際に意識しておかなければいけないのが録画番組の画質設定。HVL-Aシリーズが採用するDiXiMリモートアクセスサービスはUDPで通信を行なうため、再生できるコンテンツのビットレートは1~5Mbps程度が推奨されている。そのためリモートアクセスで視聴したい番組はDRモードなどの高画質設定ではなく、長時間録画や3倍モードといった低ビットレート設定で録画しておく必要がある。

REGZA 42Z7000で録画した番組をHVL-Aシリーズへダビング

 また、HVL-Aシリーズを含むRECBOXは単体で録画機能を持たないため、対応レコーダで録画した番組をムーブまたはダビングする必要がある。ムーブ/ダビングは同社の地デジキャプチャユニットや地デジチューナーのほか、東芝の「REGZA」「VARDIA」「REGZAブルーレイ」、日立の「Wooo」、シャープの「AQUOS」、スカパー!プレミアムサービスチューナーなど幅広く対応。SCEのネットワークレコーダ「nasne」にも新たに対応している。対応機器については、同社ホームページで案内している。

 対応レコーダからのムーブ/ダビング操作は機種によって異なり、REGZAなどアップロードムーブ型の機器はレコーダやテレビ側から操作を行う。HVL-Aシリーズへのムーブ/ダビングした番組は、Magical Finderでネットワーク上のHVL-Aシリーズを検索したのち、ブラウザから操作が可能だ。こうしたブラウザでの操作や画面インターフェイスは前モデルと共通のため、以前のレビューを参考にして欲しい。

事前登録したPCからアクセス。快適な視聴はビットレート5Mbps程度

 リモートアクセスで宅外から視聴する場合は、前述の通り接続端末の事前登録が必要。「DiXiM Digital TV 2013 for I-O DATA」を起動し、左側の「<」ボタンからメニューを表示して「サーバー」を選択。HVL-Aシリーズに表示される家の形をしたアイコンをクリックするとリモートアクセスのための事前登録を促すポップアップが表示されるので、あとは画面に従って設定を進めていくだけで登録が完了する。

リモートアクセスの際は事前登録が必要
リモートアクセスが完了するとアイコンが黄色く表示される

 外出先からリモートアクセスを利用する際は、メニュー画面から「リモートサーバー」を選択するとHVL-Aシリーズが画面に表示され、自宅からの接続と変わらないインターフェイスで操作が可能だ。

外出先からリモートアクセスするとDTCP+対応のHVL-Aシリーズのみを表示
宅内ネットワークと同じインターフェイスで操作できる
未視聴・既視聴の管理が可能
再生画面

 リモートアクセスのテスト環境は、HVL-Aシリーズを接続する家庭内ネットワークとして回線にフレッツ光、ルータにはフレッツ光向けルータ「RV-A340NE」を使用。外出先からはCore i7(1.9GHz)、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANを搭載したノートPC「Lavie G タイプZ」で、通信速度測定サイト「http://speed.rbbtoday.com/」で10Mbps以上のスループットを確保した環境からアクセスした。

 視聴用コンテンツにはnasneの3倍モードで録画した番組をムーブしてHVL-Aシリーズに保存。nasneの3倍モードはビットレートが6Mbps程度だったが、無線LAN環境では視聴中わずかに音が途切れることがあったものの、USB接続型の有線LANアダプタを経由して視聴した際は音の途切れもなく快適に視聴できた。無線LAN視聴時の途切れもごくわずかでさほど気にならず、5Mbpsを多少超える程度であれば十分に利用できそうだ。

 ただし、番組によっては同じ3倍モードの設定でもビットレートが8Mbps近くなることもあり、その場合は音だけで無く映像も途切れて視聴に耐えられる環境ではなかった。また、前述の通り高画質のDRモードで録画した場合はビットレートが10Mbpsを超えてしまい、こちらも快適な視聴は難しい。さらに別の環境で視聴した際は、測定サイトで20Mbps以上のダウンロード速度、かつまったく同じ番組を再生しているにも関わらず、無線LAN経由の視聴では頻繁に音と映像が途切れて快適な視聴ができなかった。アイ・オーが推奨する5Mbpsというビットレート設定をいかにキープするかが、HVL-Aシリーズでリモートアクセスするための重要な鍵だと感じた。

 なお、リモートアクセス接続にUDPというプロトコルを使用している関係上、UDPが利用できない環境ではリモートアクセスも利用できない。試した範囲ではdocomo Wi-Fiなど公衆無線LANサービスは場所によって接続できないことがあった。アイ・オーによればSymmetricNAT方式のルータではリモートアクセスで接続できないため、SymmetricNAT方式を採用するAndroidのテザリング機能を使った場合もリモートアクセスは対象外となるとのこと。ただしアイ・オー・データでは、SymmetricNAT方式にも今後対応予定としている。

 また、DTCP+を利用して視聴できるファイルは、他のレコーダなどで録画した番組をムーブした場合に限るという点も注意が必要だ。そのため現時点ではリモートアクセスしたい番組をムーブ・ダビング操作でこまめに移動する必要がある。

 アイ・オー・データによれば、今後はnasneなどダウンロード型ムーブに対応した機器に対し、録画した番組をHVL-Aシリーズへ自動的にダウンロードする機能をファームアップで提供予定とのこと。対応時期や詳細な仕様はわからないが、この機能があれば外出先からの視聴は、より自由度が高まるだろう。

 ただし現状は、リモートアクセス視聴できるデジタル放送番組は、「レコーダなどで録画」し、「HVL-Aシリーズにダビングした」、「ビットレート5Mbps以下の番組」に限られるという点は十分に留意したい。

「VULKANO FLOW」などと違いデジタルで視聴できるDTCP+

 自宅で録画した番組を外出先から視聴するという方法はDTCP+だけに限られたものではなく、アイ・オー・データ機器が「挑戦者」ブランドで販売している「VULKANO FLOW」や、イーフロンティアが代理店として国内販売を手がける「Slingbox PRO-HD」といった機器でも実現は可能。こちらはレコーダで録画した番組をそのまま再生できるほか、レコーダのリモコン操作やテレビ番組のリアルタイム視聴も可能。用途の広さで考えるならば、現状こうした機器のほうが上回っている。

VULKANO FLOW
Slingbox PRO-HD

 一方で、これらの機器はレコーダで録画した番組をアナログで出力し、それをネットワーク経由で視聴しているため画質や音質はさほど高くない。また、著作権保護技術「AACS」の規定により、2011年以降に発売されたBlu-ray Discプレーヤやレコーダのアナログビデオ出力はSDに制限されているほか、2014年以降はアナログビデオ出力そのものが禁止される予定となっており、現状のソリューションとしてはメリットがあるものの、将来性という点では不安が残るというのが実情だ。

'11年発売のBD機器はアナログ出力をSD解像度に制限
http://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/20110204_424700.html

 DTCP+はデジタルのままリモートで再生できるため高画質のコンテンツを視聴できる点が魅力。対応機器も現状はWindows PCに限られるが、アイ・オーはスマートフォンへの対応も予定しており、DTCP+という点ではバッファローもDLPAガイドラインに準拠したDTCP+対応NASの発売を予定するなど、DTCP+の環境は今後広まっていくことが予想される。どちらも一長一短ではあるものの、将来性という点ではDTCP+対応機器に期待したい。

 ただし、アナログ系機器の特徴として、受信中の番組をライブストリーミングして、外出先で視聴できる。この機能がDTCP+には無いのは残念なところだ。


【DTCP+とアナログ配信の比較】

機器DTCP+
(RECBOX HVL-A
【参考】アナログ
(例:VULKANO FLOW)
映像ソースデジタルアナログ
リアルタイム配信
(放送転送)
×
ソース機器の操作
(ダウンロード対応機器での自動取得)

(IRリモコン)
画質
(アナログ変換)
対応柔軟度現時点では限定的柔軟
将来性各社製品で対応を予告将来的に終息

管理画面がスマートフォン対応。DiXiM PlayerやTwonkyで宅内視聴も

 DTCP+対応以外でのHVL-Aシリーズの特徴がスマートフォン連携の強化。前モデルのHVL-AVシリーズも、DTCP-IP対応のスマートフォンやタブレットを利用して宅内ネットワークでの再生が可能だったが、HVL-Aシリーズでは設定画面もスマートフォンに対応。PCを一切使わずに録画番組のダビングやムーブ、設定が可能になった。

 スマートフォンからの操作は、HVL-Aシリーズに割り当てられたIPアドレスを直接入力することで可能。IPアドレスがわからない場合は専用アプリ「Magical Finder」が用意されている。PC版と同様、同一ネットワーク上に存在する対応機器を自動で検出できるアプリで、iOS版Android版がそれぞれ無償で公開されている。

Android版「Magical Finder」
iOS版「Magical Finder」
第5世代iPod touchからHVL-Aシリーズへアクセス
AndroidからHVL-Aシリーズへアクセス

 RECBOXの設定はブラウザ経由で行なうため、以前のモデル「HVL-AVシリーズ」でも設定画面へアクセスすること自体は可能だが、データ容量が大きくレイアウトもPC向けのため実用レベルとは言いがたい。HVL-Aシリーズはスマートフォンでアクセスするとスマートフォンに最適化されたインターフェイスで表示されるため、ムーブやダビングといった操作が手軽に可能だ。

コンテンツのムーブ/ダビング操作がスマートフォンから可能
メニュー画面
前モデル「HVL-AVシリーズ」へAndroidからアクセス
トップページ以外はスマートフォンでは閲覧や操作が難しい

 スマートフォンでの番組視聴も、アイ・オーから公式にアプリは提供されていないものの、富士通のスマートフォンブランド「ARROWS」シリーズなどにプリインストールされている「DiXiM Player」のほか、iOSとAndroid向けに提供されている「Twonky Beam」をインストールすれば可能。DiXiM Playerの最新バージョン「3.3」であれば、録画番組をダウンロードすることもできる。DiXiM Playerについては以前のレビューを参照して欲しい。

ARROWS V F-04Eにプリインストールされている「DiXim Player 3.3」からHVL-Aシリーズにアクセス
HVL-Aシリーズに保存した番組をストリーミング視聴できる
iOS版「Twonky Beam」
同一ネットワーク内のDLNA/DTCP-IP機器を表示
HVL-Aシリーズに保存した番組を再生

ダウンロードムーブに対応、nasneの録画番組をHVL-Aシリーズへムーブ可能に

「他からダウンロード」でnasneの録画ファイルにアクセス

 nasneが採用するDTCP-IPダウンロードムーブに対応した点もHVL-Aシリーズの特徴。HVL-AVシリーズではnasneで録画した番組をムーブ/ダビングすることができなかったが、HVL-Aシリーズでは管理画面の「他からダウンロード」を選択するとダウンロード型ムーブに対応した機器を自動で検出、チェックボックスで選択した番組をダビング・ムーブできる。

 ムーブ/ダビングは開始日時を指定して行なうことも可能。夜間に設定しておけば寝ている間に転送を済ませることができる。nasneの3倍モードで録画した容量5.8GBの番組は20分程度と実時間の1/6程度でダビングが可能だった。

nasneの録画番組をHVL-Aシリーズへ手動でムーブ・ダビングできる
転送時間の予約が可能
転送時の画面。実時間の1/6程度で転送が可能

 従来シリーズの機能も引き続き搭載。DTCP-IP対応機器で録画した番組のダビング/ムーブや、HDV-Aシリーズ内の番組を他の機器へダビング・ムーブする機能、HVL-Aシリーズがサーバーとなり、DTCP-IP対応テレビなどへ映像を配信する機能など、DTCP-IP対応機器間で録画番組を自由に取り回せる柔軟性の高さがRECBOXシリーズの魅力だ。スカパー! HDチューナではデータ保管だけでなく録画用HDDとして利用することもできる。ただし、HVL-AVシリーズでは対応していたCATV STBからの録画には対応していないため、同機能を利用していたユーザーは注意が必要だ。

 簡易的なNAS機能も搭載しており、Windowsの場合、「プログラムとファイルの検索」から「\\HVL-Axxxxxx(xxxxxxは本体MACアドレスの下6桁)か、「\\」の後に本体のIPアドレスを入力することでアクセス可能。転送速度はPCと本体を直結した際の公称値として前モデルが52MB/Sec、HVL-Aシリーズが78MB/Secを公称しているが、発売時期が異なるため測定PCのスペックにも性能差があり、数字そのままの比較は難しい。同一のPCから約1GBのファイルを有線LAN経由で転送したところ、どちらも1分半ほどの転送速度を要したため、転送速度は前モデルとさほど変わらないようだ。

有線LAN経由で「CrystalDiskMark」を使用したHVL-AVシリーズのベンチマーク結果
HVL-Aシリーズのベンチマーク結果

快適なリモートアクセスには工夫が必要。「これから」に期待

 DTCP-IP対応機器間で自由にコンテンツを取り回すことができ、テレビやレコーダ、スカパー!プレミアムなど、DTCP-IPムーブ対応機器の録画用HDDとしても活用できるという従来の機能に加え、DTCP+によるリモートアクセスにも対応したHVL-Aシリーズ。宅内と変わらない操作で外出先からアクセスできる操作性に加え、高画質で遅延もなく録画番組を視聴できるのは非常に快適だ。

 リモートアクセスを抜きにしても、小型/静音化やダウンロードムーブ対応、接続ストリーム数の増加、DLNA対応など、RECBOXのリニューアルモデルとして堅実な進化が図られている。

 ただし、現状ではDTCP+とリモートアクセスの使いこなしにユーザー側の工夫が必要な点は十分に留意したい。リモートアクセスで視聴するためには録画番組をHVL-Aシリーズにムーブ/ダビングしておく必要があることに加え、ダビングする番組のビットレート5Mbps以下という制限は大きな課題だ。ムーブ/ダビング操作に関しては今後提供されるオートダウンロード機能により、nasneのようなダウンロードムーブ型機器では解消される見込みだが、5Mbpsというビットレートの制限については、将来の製品ではNAS側でトランスコードして配信する機能の実装などを望みたい。ただし、HVL-Aシリーズではトランスコード機能などは有していないとのことだ。

 DTCP+リモートアクセスは、これまで不可能だったデジタル放送録画番組の外出先からのストリーミング視聴を可能にしたという点で、間違いなく大きな前進だ。ただし、アナログ録画番組のような自由度が実現されたわけではなく、レコーダでDTCP+対応が困難といった制度的な制限、そしてビットレートや配信帯域といった技術/利用環境による制限が現時点では存在する。この機能に期待する場合、そうした制限をきちんと理解した上で購入してほしい。

 もっとも、ムーブ/ダビングやビットレート制限については、運用でカバーできる部分で、工夫次第ではかなり自由なリモート視聴環境が実現できるかもしれない。また、DTCP+に対応した製品が増えることで、より簡単なソリューションがこれから生まれていくことにも期待したい。

【RECBOX/HVL-L リモートアクセスの特徴】
[利点]

  • デジタル放送録画番組を外出先からリモート視聴可能
  • 画質劣化が少ない
  • 宅外からのレスポンスも良好

[注意点]

  • 現時点ではレコーダ/テレビからのダビングが必須
  • 配信可能な録画番組のビットレートは約5Mbps
  • 対応クライアントは現時点ではWindows PCのみ
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甲斐祐樹